【2】坤為地・【十翼】

文言伝(ぶんげんでん)・【2】坤為地(こんいち)

文言曰。坤至柔而動也剛。至靜而德方。後得主而有常。含萬物而化光。坤道其順乎。承天而時行。

文言に曰く、坤は至柔にして動くや剛なり。至静にして徳方なり。後るれば主を得て常あり。万物を含んで化光いなり。坤道はそれ順なるか。天を承けて時に行なう。

文言(ぶんげん)に曰(いわ)く、坤(こん)は至柔(しじゅう)にして動(うご)くや剛(ごう)なり。至静(しせい)にして徳方(とくほう)なり。後(おく)るれば主(しゅ)を得(え)て常(つね)あり。万物(ばんぶつ)を含(ふく)んで化(か)光(おお)いなり。坤道(こんどう)はそれ順(じゅん)なるか。天(てん)を承(う)けて時(とき)に行(おこ)なう。

ぶんげんにいわく、こんはしじゅうにしてうごくやごうなり。しせいにしてとくほうなり。おくるればしゅをえてつねあり。ばんぶつをふくんでかおおいなり。こんどうはそれじゅんなるか。てんをうけてときにおこなう。

初爻

積善之家。必有餘慶。積不善之家。必有餘殃。臣弑其君。子弑其父。非一朝一夕之故。其所由來者漸矣。由辯之不早辯也。易曰。履霜堅冰至。蓋言順也。

積善の家には必ず余慶あり。積不善の家には必ず余殃あり。臣にしてその君を弑し、子にしてその父を弑するは、一朝一夕の故にあらず。その由って来るところのもの漸なり。これを弁じて早く弁ぜざるに由るなり。易に曰く、霜を履んで堅氷至ると。蓋し順なるを言えるなり。

積善(せきぜん)の家(いえ)には必(かなら)ず余慶(よけい)あり。積(せき)不善(ふぜん)の家(いえ)には必(かなら)ず余殃(よおう)あり。臣(しん)にしてその君(くん)を弑(しい)し、子(こ)にしてその父(ちち)を弑(しい)するは、一朝一夕(いっちょういっせき)の故(こと)にあらず。その由(よ)って来(きた)るところのもの漸(ぜん)なり。これを弁(べん)じて早(はや)く弁(べん)ぜざるに由(よ)るなり。易(えき)に曰(いわ)く、霜(しも)を履(ふ)んで堅氷(けんぴょう)至(いた)ると。蓋(けだ)し順(じゅん)なるを言(い)えるなり。

せきぜんのいえにはかならずよけいあり。せきふぜんのいえにはかならずよおうあり。しんにしてそのくんをしいし、こにしてそのちちをしいするは、いっちょういっせきのことにあらず。そのよってきたるところのものぜんなり。これをべんじてはやくべんぜざるによるなり。えきにいわく、しもをふんでけんぴょういたると。けだしじゅんなるをいえるなり。

二爻

直其正也。方其義也。君子敬以直内。義以方外。敬義立而德不孤。直方大。不習无不利。則不疑其所行也。

直はそれ正なり、方はそれ義なり。君子は敬もって内を直くし、義もって外を方にす。敬義立てば徳孤ならず。直・方・大なり、習わざれども利ろしからざるなしとは、その行なうところを疑わざるなり。

直(ちょく)はそれ正(せい)なり、方(ほう)はそれ義(ぎ)なり。君子(くんし)は敬(けい)もって内(うち)を直(なお)くし、義(ぎ)もって外(そと)を方(ほう)にす。敬義(けいぎ)立(た)てば徳(とく)孤(こ)ならず。直(ちょく)・方(ほう)・大(だい)なり、習(なら)わざれども利(よ)ろしからざるなしとは、その行(おこ)なうところを疑(うたが)わざるなり。

ちょくはそれせいなり、ほうはそれぎなり。くんしはけいもってうちをなおくし、ぎもってそとをほうにす。けいぎたてばとくこならず。ちょく・ほう・だいなり、ならわざれどもよろしからざるなしとは、そのおこなうところをうたがわざるなり。

三爻

陰雖有美。含之以從王事。弗敢成也。地道也。妻道也。臣道也。地道无成。而代有終也。

陰は美ありといえども、これを含んでもって王事に従い、あえて成さざるなり。地の道なり、妻の道なり、臣の道なり。地の道は成すことなくして、代って終り有るなり。

陰(いん)は美(び)ありといえども、これを含(ふく)んでもって王事(おうじ)に従(したが)い、あえて成(な)さざるなり。地(ち)の道(みち)なり、妻(つま)の道(みち)なり、臣(しん)の道(みち)なり。地(ち)の道(みち)は成(な)すことなくして、代(かわ)って終(おわ)り有(あ)るなり。

いんはびありといえども、これをふくんでもっておうじにしたがい、あえてなさざるなり。ちのみちなり、つまのみちなり、しんのみちなり。ちのみちはなすことなくして、かわっておわりあるなり。

四爻

天地變化。草木蕃。天地閉。賢人隱。易曰。括嚢。无咎无誉。蓋言謹也。

天地変化して、草木蕃く、天地閉じて、賢人隠る。易に曰く、嚢を括る、咎もなく誉れもなしと。蓋し謹むべきを言えるなり。

天地(てんち)変化(へんか)して、草木(くさき)蕃(しげ)く、天地(てんち)閉(と)じて、賢人(けんじん)隠(かく)る。易(えき)に曰(いわ)く、嚢(ふくろ)を括(くく)る、咎(とが)もなく誉(ほま)れもなしと。蓋(けだ)し謹(つつし)むべきを言(い)えるなり。

てんちへんかして、くさきしげく、てんちとじて、けんじんかくる。えきにいわく、ふくろをくくる、とがもなくほまれもなしと。けだしつつしむべきをいえるなり。

五爻

君子黄中通理。正位居體。美在其中。而暢於四支。發於事業。美之至也。
繫辭下伝:黄帝堯舜垂衣裳而天下治。蓋取諸乾坤。

君子は黄中にして理に通じ、正位にして体に居る。美その中に在って、四支に暢び、事業に発す。美の至りなり。
繫辭下伝:黄帝堯舜衣裳を垂れて天下治まるは、蓋しこれを乾坤に取る。

君子(くんし)は黄中(こうちゅう)にして理(り)に通(つう)じ、正位(せいい)にして体(たい)に居(お)る。美(び)その中(なか)に在(あ)って、四支(しし)に暢(の)び、事業(じぎょう)に発(はっ)す。美(び)の至(いた)りなり。
繫辭下伝:黄(こう)帝(てい)堯(ぎょう)舜(しゅん)衣裳(いしょう)を垂(た)れて天下(てんか)治(おさ)まるは、蓋(けだ)しこれを乾坤(けんこん)に取(と)る。

くんしはこうちゅうにしてりにつうじ、せいいにしてたいにおる。びそのなかにあって、ししにのび、じぎょうにはっす。びのいたりなり。
繫辭下伝:こうていぎょうしゅんいしょうをたれててんかおさまるは、けだしこれをけんこんにとる。

上爻

陰疑於陽必戰。爲其嫌於无陽也。故稱龍焉。猶未離其類也。故稱血焉。夫玄黄者。天地之雜也。天玄而地黄。

陰、陽に疑わしきときは必ず戦う。その陽なきに嫌わしきがために、故に竜と称す。なおいまだその類を離れず、故に血と称す。それ玄黄は、天地の雑りなり。天は玄にして地は黄なり。

陰(いん)、陽(よう)に疑(うたが)わしきときは必(かなら)ず戦(たたか)う。その陽(よう)なきに嫌(うたが)わしきがために、故(ゆえ)に竜(りゅう)と称(しょう)す。なおいまだその類(るい)を離(はな)れず、故(ゆえ)に血(ち)と称(しょう)す。それ玄黄(げんこう)は、天地(てんち)の雑(まじわ)りなり。天(てん)は玄(げん)にして地(ち)は黄(こう)なり。

いん、ようにうたがわしきときはかならずたたかう。そのようなきにうたがわしきがために、ゆえにりゅうとしょうす。なおいまだそのるいをはなれず、ゆえにちとしょうす。それげんこうは、てんちのまじわりなり。てんはげんにしてちはこうなり。

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